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2015/01/13

ヤギは、50メートル先の人間の顔を見分けることができるか


左の写真の建物の屋上から、右の写真のように、ヤギたちの放牧場に向いて大きく手を振る(写真の人物は実験に協力してくれたゼミ生のUくん)


屋上から見えるヤギたちの風景(白い塊がヤギ.七頭いる.一頭柵から外に出ている.下のほうの白は雪である)

 私が勤務する大学には、ヤギ部という学生サークルがある。大学創立時の2001年、私が最初の講義の中で学生に呼びかけたら、たくさん学生が集まった。今年で14年目になる。
 一応、目的は、「ヤギの飼育を通して環境問題を学ぶ。ヤギによる除草やふれあい体験などを通して地域との交流をはかる」ということになっている。
 
 ところで、ヤギをめぐっては、私は常々、疑問に思うことがあった。もちろん一つではなく、私くらい知的になると、いつもたくさんの疑問を抱えて生きている。
 ヤギについての疑問の一つは、次のようなことだった。
 
 私は屋上から ヤギたちの動きを鳥瞰的に見るのが好きで、ときどき屋上に出て放牧場を眺めていた。
 そんなある日、放牧場の、あるヤギが私のほうを見て、メーと鳴き、他の個体もメーと鳴いた。
 それ以来、私が屋上で手を振ると、ヤギたちがメー、メー鳴くようになった。感動的な話である。
 そして、やがて、私は思うようになった。
 ヤギたちは、屋上にいる私を、私(しばしば餌をくれたり頭や体をなでてくれるヤツ)だと分かって鳴いているのか、とにかく、屋上にいる人間を見て、餌でもくれないかと期待して鳴いているのか、どっちだろうか・・・・と。
もし、私だと分かってメーと鳴いているのだとしたら、おそらく変わることのない顔を手がかりにしているのだから、ヤギたちはかなり視力がよいことになる。彼らの原種が、開けた乾燥草原で生きていることを考えるとそれもありうることかもしれない。そんなことをぼんやりと考えていた。

 そして月日は流れ、先日、やっと思い立って、その疑問を調べてみることにしたのだ。
 私のゼミの教室を覗いてみると、4年生のUくんと、3年生のYくんがいた。私は、髪型などが私とかなり異なるUくんに、協力を頼むことにした。
 Uくんと一緒に屋上にのぼり、ヤギたちが屋上の比較的近くで餌を食んでいるいるのを確認した後、私は隠れておき、Uくんに、いつも私がやるように行動してもらった。屋上の端から身を乗り出すようにして手を振るのである。
 そして、その反応を確認し、次に私がそれを行うのだ。

 結果はどうだったか。
 Uくんにもヤギたちはメーと鳴くのだが、私が登場すると、Uくんも認めるとおり、そのヤギたちの歓声は、明らかに盛り上がるのだ。
 そんな現象を2回確認して、私は、「ヤギは、50メートル先の人間の顔を見分けることができる」という感触を得て屋上を後にした。やっぱりそうだろー、あいつらは私だと分かってメーと鳴いているんだ!

 もちろん、これを研究レベルに上げるためには、もっと厳密な実験を繰り返さなければならない。でも、やっぱり、あいつらは私だと分かってメーと鳴いているに違いない。