Pages

2015/05/11

何でこんなところに!?廃坑の奥深い暗闇の中にいた両生類と甲殻類


 先日、鳥取県の、とある山の麓にある廃坑に、学生達や地元の方達と一緒に入った。

 目的はコウモリだったが(その廃坑には、洞窟性コウモリが四種も同時に棲んでいたのだ)、今回はコウモリの話ではない。
 その廃坑の奥深い場所の壁面や池で見つかった両生類や甲殻類の話である。

 幅50cm程度の、人一人が入れるくらいの入り口を入ると、内側は緩やかに下方に落ち込み、そこには水が溜まっている。
 水の中を進むと水深は徐々に増し、腰の下くらいまで深くなる。

 そこから徐々に水は浅くなり10mほど進むと水はほとんどなくなる。
 それから進むこと約60m、高さ1.6mほどの天井に、突然、上に向けて直径2mほどの穴が、少なくとも10mほどの高さまでのびている。
 いわゆる縦穴であり、ここから中で掘った岩石を吊り上げていたのではないかと推察される。

 さて、今回ご紹介する“両生類”と“甲殻類”はどこにいたのか。

 まず“両生類”とは、カジカガエルのことである。
 坑内の横壁に人工的に開けられた、直径2cm程度の小さな穴に、どういうわけか、カジカガエルが、穴にちょうどスッポリ納まるように入っていた。
 入り口から30mほど奥の、もちろん真っ暗な闇の中である。

 夏には谷川で涼にうってつけの澄んだ求愛音声を聞かせてくれるカジカガエルが、それまでの期間を、こんなところで過ごしているとは(もちろんすべての個体がそうではないだろう。冒険心にあふれた個体が、坑道を奥へ奥へとは進んでいったのだろう)!

 そして、もう一つ、私がこれまでの洞窟探索ではじめて発見した動物が、“サワガニ”である。
 先ほど「縦穴が上空へとのびている」と言ったその場所からさらに奥へと進むと、道は二手に分かれ、その右手の坑道の地面を照らしたとき、何か動くものが私の目に飛び込んできた。
 そこには深さ10cm程度の水が溜まっており、その中に、いたのがサワガニである。

 外界と隔絶された、こんな洞窟の奥の奥の水場に、何でサワガニがいるのだろうか。
 これもまた謎である。

 大体、カジカガエルにしても、サワガニにしても、いったい何を餌にしているのだろうか。
 彼らの命の糧になる他の小動物もいるということだろうか。外の餌を食べるコウモリの糞の中の未消化物を底辺にして、それらに支えられる食物連鎖が成立しているのだろうか。

 詳しく探せば、もっともっとたくさんの小動物が見つかるのだろか。
 おそらくそうだろう。新種も含めて、さまざまな動物が生きているのだろう。

 ただし、一つだけ、カジカガエルとサワガニに言っておきたいことがある。
 それは、「闇の世界は、まだ、君たち本来の場所ではない」ということだ。なぜなら、君たちには、まだ、立派な“眼”がついているではないか。眼は情報源として、光を利用するための器官だ。つまり、眼は不必要な、正確に言えば、邪魔な器官なのだ。

 君たちが、洞窟の中で、何世代も何世代も生存と繁殖を続けていき、闇の中では邪魔になる眼を遺伝的に失ったとき、本当のドウクツカジカガエル、ドウクツサワガニが誕生するのだ。

 それが、洞窟内の環境に適応した進化なのだ。