カクレミノの流産
よくない出来事だが、「流産」という現象がある。
子宮内で、何らかの理由で発生が滞った胚を、母親の体が、それ以上の栄養を与えることをやめて、体外に出してしまう現象である。
より多くの、繁殖まで育ちうる子どもを多く残すことが、進化の結果、生き残る必要条件だから、流産は、現在生き残っている哺乳類が共通してもつ体の組みなのだ。
上の写真は、カクレミノだ。
天狗が、ギザギザの形をした葉っぱを頭にのせて呪文を唱えると、姿が見えなくなることから、この名前(カクレミノ)がついた、と聞いたことがある。
ところでこのカクレミノをご存知の方は、9月の中旬ごろから、カクレミノが、下の写真のような、熟していない実のようなものをたくさん地面に落とすのを知っておられるだろうか。
これは、流産の植物版とでもいえる現象なのである。
つまり、成長が思わしくない胚(めしべの中の子ども)に栄養を与えるのをやめ、切り捨てているのだ。その結果、力強く成長している胚が残るというわけだ。
生きるということは、死も含んだ営みなのだと私は思っている。