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2016/06/08

失意の私は海に行った



日曜日、久しぶりに、少し本の原稿を書く時間ができたので、数日まえに宣伝した「先生、●●しました 鳥取環境大学の森の人間動物行動学」第10巻に続く11巻のスタートに挑んだ。いや挑もうとした。

ところがだ、はじめてみると大変な事実が明らかになってきた。

まだ一つ目の話だが、これまでコツコツと書き続けて6割がたWordに打ち込んでいたそのファイルがどこにもないのだ(アナグマについての話だ)。私はアナグマに、いやキツネにつままれたような気分になっていろいろなメモリーやクラウドの中まで必死に探したのだけれど・・・・ないのだ。ちなみに原稿は、Wordに打ち込んだ分はもう存在しない。捨てたのだ。
私は、探し続けて疲れ果てて、とてもとても悲しい気分になってほとんど寝込んでしまった。
推敲を繰り返しながら、結構よく書けていたのだ。もうあれほど巧みには書けないだろう。そんなことを考えるといよいよ失ったものの大きさに押しつぶされそうになった。

あー、もう駄目だ!
これまで一度だけそういうことがあったが、今回はなぜかその時よりショックがずっとずっと大きかった。
あー、もう駄目だ!

しかし、私も野生の子。しばらくして、このままではせっかくの一日がダメになる。なんとかせねば、と反発心がメラメラと湧き上がってきた。

よしまずは海へ行ってみよう。それから大学へ行き、日課のコウモリへの餌やりだ。
なぜ海か?

家の近くの低い山では蚊にやられると思ったのだ。
その点、海には蚊がいない。そして家のすぐ近くに私がフィールドにしている顔なじみの砂浜がある。
それにほら、演歌ではだいたい、心が傷ついたときは海に行くではないか。そこへ行って波打ち際の生物を見れば元気も出るかもしれない。そんなことを思ったのだ。

そんな私の心の傷を知っているかのように、海は素敵なものをプレゼントしてくれた。その海と、海のプレゼントが上の写真である。

プレゼントは、ヒトデとウニの骨格である。
ヒトデとウニは、どちらも棘皮動物と呼ばれる動物で、外骨格の動物の中では我々ヒトに最も近い仲間なのだ。

私はヒトデとウニの、自然物に備わった特有の美しさに癒され、これくらいのこと、ちっぽけなことだと空威張りしながら大学へ向かったのだった。

そのあとの話はまた今度。