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2015/04/30

ヘビ飼いの名手、そして彼女の名は?


先日、研究室にある女子学生が訪ねてきた。
 「なんか元気がなくて、大丈夫かどうか心配なんです」という話だった。

 その日からさかのぼること約1週間、彼女は一度ヘビ(アオダイショウ)のことで相談にきていた。
「冬眠させていたヘビが動き出したのでそろそろ餌をやってもいいですか」ということだった。

 ヘビの冬眠については昨年の暮れにも相談を受けていた。彼女がヘビを捕獲したのは、確か、もうヘビ類が、ほどんど冬眠に入るころだったと思う。「餌はあげないほうがいいよ」とアドバイスしたのを覚えている。冬眠のさせ方についても知っていることを話してあげた。

 私もアオダイショウを飼育しており、その子もずっと冬眠していた。そして、10日ほど前に、暖かくなったしもういいだろう、と、今年初めての餌を与えたところだった。
 
ちなみに、私のヘビへの餌やりは、「スーパーで買ってきた鶏肉の小片をピンセットでつまみ、ヘビの喉の奥に入れてやる」という方法だった。
 生餌はもちろん、冷凍マウスなどを与えることはしたくないので、このような方法を、試行錯誤で考えだしたのだ。

 餌をやるととき、私が、ヘビの体を握る、つまり拘束する、という点がちょっとエレガントでないが、慣れてくると、ピンセットでつまんだ鶏肉近づけると、ヘビは自分から口を開けることもある。とにかく、その方法でヘビが元気に過ごしている。


 「冬眠させていたヘビが動き出したのでそろそろ餌をやってもいいですか」という質問に。もちろん私は、「そろそろいいよ」と答え、餌のやり方についても、小林方式を教えたあげていた。

 先日の相談では、そのヘビが、元気がなくてほとんど動かず、心配になったというわけだ。

 大学にもってきているということだったので「じゃあ、見てあげよう」ということになり、初めてそのヘビに対面した。

 肌の艶といい太さといい、体の姿勢といい、動かなくてもまったく問題ない、大丈夫!と彼女に言いながら、飼育容器の中でじっとしてるアオダイショウを手にとってまじまじと顔をみた。なかなかチャーミングな顔をしている。

 彼女に聞いてみた。
 「餌はどうなの?」
 彼女が言った。
 「食べますよ。」

 ところがそれからの数回の言葉のやり取りの中で、彼女は、私が、聞き流すにはちょっと(かなり)刺激的過ぎることを口にしたのだ。

 「鶏肉を小さく切って乾かしておいて、それを水にふやかして、ヘビの口の辺りに置いておいたら、自分から食べます。直接は見てはいないですが、鶏肉がなくなっているので確実に食べていると思います。」

 ・・・・・・その方法は、私が苦労して編み出した、ヘビへの餌やりの“秘伝”よりもずっとナチュラルで簡単ではないか!

 実は、彼女の動物飼いのテクニックには日ごろから一目置いていたのだが、ヘビへの、そんな餌のやり方をいとも簡単にやってのけるとは。
 小林流「ヘビ餌やり法」を編み出すまでの私のあの努力は一体なんだったのか。
「あなたは天才だ」と言いながらその場を後にした私だったのだ。

 ヘビ飼いの名手、そして彼女の名は、「ハブ」さんだ。


※“彼女”の名前の公開の了解は得ています。ハブ流の餌やり法についても今度了解を得て使わせてもらおう。トホホホホ。

2015/04/29

恐るべしヘビの声を発するシジュウカラ?!


 皆さんは、親シジュウカラが、卵やヒナを、巣への侵入者から守るために行う威嚇的行動をご存知だろうか。

 私は、先日、生まれてはじめてその行動を見た。見たというかその洗礼を受けた。

 シジュウカラが入っているとは知らず、シラカシの木に取り付けた巣箱の蓋を開けたら、親鳥が威嚇してきたのだ。

 尾羽を、異様に大きく広げ、口から、シュー、シューという声を発するのだ。

 そばにいた学生は、「ヘビの声のようだ」と言ったが、私も、なぜかその声から、「ヘビ」を連想した。
 
 でも不思議なのだ。
 日本にいるヘビで、シューという声を出すヘビはいないのだ。シューという声を出すヘビは、私が知っている限り、インドなどに生息するコブラ類と南米やアフリカなどに生息する大型のヘビ(ニシキヘビやアナコンダなど)なのだ。

 そういえば、アリスイというキツツキ科の鳥は、巣を守るとき、体を木の表面に沿わせて長細い形になり、さらにその長細い体をくねらせる。その姿は「ヘビ」そっくりであり、ヘビの姿を真似て相手を威嚇しているのだろうと考えられている。

 ちなみに、ネコが相手を威嚇するときに出すシャーという声もヘビの真似だという説を支持する動物学者は多い(私は、・・・・○×△といったところだ)。

 ヘビはネコより恐いというのか。毒ヘビは確かに恐いかもしれない。大蛇も。
 そして、ヒトの脳内には、狩猟採集時代の、「シュー(シャー)=毒ヘビ、大蛇」という認知回路がまだ残っていると考えられなくもない。

 とりあえず、「恐るべし、ヘビ!」と言っておこう。

 ※ シジュウカラの威嚇音を添付しておくので、ヘビを連想されるかどうか、聞いてみていただきたい。


2015/04/24

タゴガエルとナガレホトケドジョウの谷で(動画)



 セミ生のMくん、Iさんと一緒にナガレホトケドジョウの調査に行った。

 もちろん上の写真はナガレホトケドジョウではない。ナガレホトケドジョウの谷で出合ったタゴガエルだ。一番目の写真が雄で、二番目のの写真が雌だ。雄の特徴は、太い前肢だ。
 そう、ちょうど先日(4月19日)は、タゴガエルの繁殖シーズンで、雄は谷川の両脇の石や土の隙間で、振り絞るような、なんとも切ない声を出して雌に求愛している(音入りの画像を添付しているので見て、聞いていただきたい。谷川の水音がなんともすがすがしい)。

 通常は、雄が求愛する穴の中で雌は産卵するのだが、先日は、谷川の中ほどの石の上に、タゴガエルのものと思われる卵塊の一部が付着していた。下の写真である。 


 以前、ゼミ生のMくん(今日のMくんと同一人物)、Yくんと一緒に、先日行った場所と同じ谷川にナガレホトケドジョウの調査に来たときのことだった。水中にあったタゴガエルの卵を、ナガレホトケドジョウの卵と勘違いして、「おおーっ、ナガレホトケドジョウの卵をみつけた!」と盛り上がったことがあった(正直に言うと、“私が”盛り上がったことがあった)。

 言い訳をするわけではないが、タゴガエルの産卵期とナガレホトケドジョウの産卵期とはかなり重なり、外観も似てるといえば似てるのである。

 MくんやIさんには、調査地の谷川のナガレホトケドジョウのほとんどを個体識別して、彼らの、谷川における移動の実態を明らかにしてほしいと思っている。もちろん産卵場所の特性なども含めてだ。


 ちなみに、ナガレホトケドジョウの個体識別は、腹側の血管や筋肉の走行によって行う。そのパターンが個体ごとに一定しているのだ。




これまでMくんが、その谷川で“戸籍謄本”登録をしてきたナガレホトケドジョウの住民は50個体ほどだという。
 その日、Mくんに、この谷川に全部で難個体くらいいると思う?と聞いてみた。ちょっと考えた後、「100個体くらい」という返事が返ってきた。

 その時のMくんの顔がきっぱりしていて、私はなんだか頼もしさを感じてうれしかった(でも、私は、200はいると思っている)。