小林朋道公式ブログ:動物行動学者。野生生物と3日ふれあわないと体調が悪くなる。 主な著書は『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます! 』、『通勤電車の人間行動学』、『人間の自然認知特性とコモンズの悲劇』など
Pages
▼
2015/12/25
本の表紙ができるまで。 そこには大変な苦労があるのだ(それはおまえのせいだろ!)
上の画像は、先日、発売になった、著者「小林朋道」の、動物行動学と涙と感動の物語がびっしり詰まった本の表紙である。
一般に、本ができるまでには、執筆者はもちろんだが、本の制作に関わる多くの方々の大変な努力がつぎ込まれているのだ。
たとえばだ。上の本の表紙一つとっても、・・・・編集の担当の方が、デザイナーさんに依頼して幾つかの表紙の案をつくる。そして、その案を執筆者に送って意見を聞く。
すると執筆者は(上の例では、私、だが)、これはダメ、これもだめ、ああしろ、こうしろと無理難題を言う。
すると担当の方は、その無理難題に沿ったものをデザイナーさんに提案し、少しずつ執筆者が「これならいい」といまで近づけていく。
ちなみに、今回は執筆者の無理難題に沿って、上の表紙以外にも、下のような案もデザイナーの方から提案があった(これら3つになるまでにもいろいろな案がつくられているのだ)。
そして執筆者は最後に細かいわがままを言って、それが反映され、やっと上の表紙になった、というわけだ。
こうしてみると、今回のブログのタイトルのようになるわけだ。
2015/12/22
キクガシラコウモリは頬袋(みたいなもの)をもっている!
実験を手伝ってもらうキクガシラコウモリは、研究室に連れてきてから一週間近くは、私が、コウモリの口の前にミルワーム(甲虫の幼虫で、コウモリの餌にはうってつけ)をもって食べさせなければならない。
そうするとコウモリはバクッとミルワームにかぶりつき、むしゃむしゃとおいしそうに食べる。
ところがだ、かれらは私が与えるミルワームを次から次へと平らげ、「もう満腹」とばかりにミルワームにかぶりつかなくなるまで、結構な量の餌を与えなければならない。
もうそろそろいいだろ、という私の思いも通じず、まーよく食べるのだ。
そしてそのうち気づいたのだが、かれらは、私が与えた餌をすべて飲み込んでいるのではなく、途中から、口内の頬の辺りに溜めているのだ。その結果、頬の辺りが、ちょうどシマリスやハムスターの、餌で膨らんだ頬袋と同じような状態になるのだ。かなり膨れる。
おーっ、大発見だ!
その様子を撮ったのが上の写真である(ちなみに、ユビナガコウモリやモモジロコウモリなどの他の種類のコウモリではこんなことはない。きっとキクガシラコウモリの生活と深く関係した習性なのだ)。
おそらく世界約73億の人の中でこのことを知っている人は、数十人か数人か、あるいは私だけかもしれない。
「それがどうかしたのか?」とは聞いてはいけない。聞かないで欲しい。
2015/12/18
えっ、モモンガが4匹、木から出てきた!?
左の写真は、その中に4匹のモモンガがいたと思われる巣穴がある木.左は、それらのモモンガを見た方からの話から想像される年齢のモモンガ
先日、鳥取県の芦津のAさんから次のような内容の電話があった。
町長さんの山で作業をしておられた方が、木を切っていたら、倒れた木から4匹のモモンガ(らしきもの)が出てきた。そのうちの1匹を連れて帰っているだがどうすればよいだろうか。
私は考えた。
今の季節に4個体のモモンガが一つの巣穴にいたということは、「巣内同居は寒さをしのぐためのモモンガたちの戦略だ」という私の仮説を支持する出来事だ。でも、成獣だったら(仮に木が倒れた拍子に脳震盪を起こしたとしても)そんな簡単に、素手の人間につかまるはずはない。でも季節から考えて、今の時期、同じ巣穴に留まっているような仔モモンガがいるはずはない。春と夏、繁殖期をもつモモンガだが、夏の繁殖期で生まれたとしても、今はもう充分成長しているはずだ。
これはどういうことだ・・・・(まー、とりあえず、モモンガは、それが捕獲された場所で放すのがいいでしょうと答えたが、大きな疑問を抱え込んだ気がした)。
そして私は、その場所と、4匹のモモンガの様子を聞くために、大学から1時間ちょっとかかる町長さんのご自宅へ行ったのだった。
ちょうど奥様が対応してくださり、モモンガを連れて帰った方とも直接話ができた。
その結果、そのモモンガたちは、やはり生後数ヶ月齢の仔モモンガだった可能性が高いことが分かった。
そして、町長さんのお計らいで庭にもって帰ってあった、4匹のモモンガがいたと思われる巣穴がある木と対面することができたのだ。
その後で、モモンガが巣穴を利用していた木の場所へ行ってみた。
スギの木と自然林が接する、私が生息地の研究で達していた「ニホンモモンガはスギ林と自然林が接するような場所を一番好む」という結論にピッタリの場所だった。
その日は、モモンガの巣の木を持って帰ることはできなかったので(その木を持ち帰るためには軽トラックが必要)、「また取りに来ますのでとっておいて下さい」とお願いして帰路についた。
ちなみにその木は「キハダ」という樹皮の下が鮮やかな黄色をしている樹木だった。
私は近々その木を持ち帰り、木を真っ二つにして巣の内部を調べることを今から楽しみにしている。
きっとスギの樹皮を細かく裂いて作った巣材が厚く敷かれていると思う。
実際にその時がきたら、このブログで是非お見せしたい。
2015/12/16
2015/12/14
ユビナガコウモリのチーちゃんをねぐらの洞窟に返す
先日、大学で実験のために飼育していたユビナガコウモリ(私は、密かに“チーちゃん”という名前にしていた)を、採集した洞窟に返しに行った。
冬はコウモリを飼育するのが難しいのだ。
上の写真は、洞窟に放す前に、最後の餌(ミルワーム)をあげているところだ。しっかり食べて、数が月の冬眠に備えて欲しい、と思ったのだ。
その洞窟に行ったのにはもう一つ目的があった。
それは2年前に採集して足環をつけたキクガシラコウモリが、今年もその洞窟で冬眠しているかどうかを確認したかったからだ。
そのコウモリは1年前は、そこで冬眠していた。さて今年もまたその洞窟で冬眠するかどうか.? それは学問的にも興味深い問題である。
そして調査の結果は、・・・・今年もいた!!
赤い足環を後ろ足につけたキクガシラコウモリが洞窟の奥のほうにぶら下がっていた。
なんと素晴らしい! そしてチーちゃん、元気に冬眠を!
2015/12/12
里山生物園でのトカゲたちのちょっとした感情的トラブル?
以下の記事は、公立鳥取環境大学まちなかキャンパス「里山生物園」FaceBookに書いた記事である。ちょっと見てもらいたい。
***************************************
まずは上の写真を見ていただきたい。
ニホントカゲとニホンカナヘビのニアミスである。
これは大変貴重な写真である。里山生物園だからこそ遭遇できた場面だ。
お互い相手をどう認知しているのか。実は、この遭遇の前にちょっとした出来事があったのだ(何があったかを知りたい方は私のブログ「ほっと行動学」の動画を見ていただきたい。数日うちにはアップするので)。
そしてこのあと、なんと体格で劣るカナヘビがトカゲを追い払うのだ。
ちなみにこのカナヘビはこのFacebookでもよく記事を書いてくれているKWくんが家で大切に飼っていた“みどりちゃん”という名の個体である。
ところでKWくんは、みどりちゃんのために、暖房用のライトを買ったそうだ。それをテラに設置するそうだ。どんな風景になるか楽しみだが、少し心配だ。里山が「渋谷」のようになったりして。そしたらみどりちゃんは里山の純朴なカナヘビから、都会の、土をさわるのもいやがる女の子になるのだろうか。
そういえば生物部の面々の間で最近、不穏な動きがある。
アクア、テラとは異なった第三の里山生物園をつくろうとしているらしい。
なんでも、その生物園は、トロピカルなビーチを再現した、華やかなリゾート地のようになるという噂も聞いている。アクア、テラ、そしてトロピカルシティー・・・・? 私は心配だ。
TK
****************************************
記事の中に出てくる「ほっと行動学」が、このブログなのだが、写真にある“眼付けニアミス”の前にあった“ちょっとした出来事”というのが下の映像である。
動画には、まちなかキャンパスのキャンパス長である加藤さんが、トカゲに餌を与え、そのそばで「なんであいつだけが餌を食べてるんだ、俺のほうはどうなるんだ!」とばかりにトカゲをガン見しているカナヘビの姿が映っている(途中で「あっ、そう」とばかりにプイッと顔を背けるみどりちゃんの姿も映像はとらえている)。
みどりちゃんは、この時、トカゲ(一応名前はポチだったかなんだったか付いている)に対し「あいつがいると私は餌が食べられない」みたいなことを感じたのかもしれない。ナンチャッテ
2015/12/10
イヌとヤギのミーティング!?
大学から車で20分くらいのところに、「カニス」というイヌの飼育全般についてサポートを受けられるセンターがある。広い敷地の中でイヌを自由に運動させることもできる。
2年前に、センターのMさんから、広場の除草(大学のヤギに草を食べてもらって)を依頼されたことがきっかけで、部員達との交信が続いてきた。
そのとき、出動したのはクルミというヤギだったが、最初一頭だったので不安定な行動が多く、ミルクというヤギを2頭目のヤギとして加えてやっと、クルミも落ち着きを取り戻した。
でもあまり草を食べる仕事はせず、もっぱらカニスに連れられてくるイヌとフェンス越しに、あるときは戦闘モードで、あるときは好奇心いっぱいモードで接していたらしい。
そして今週の日曜日、今度は、目的を、除草ではなく、イヌとの交流のほうに絞った(!)出動をすることにした。題して「イヌとヤギとのミーティング」だ。
そこでは、地域の方(特にイヌを飼育されている方)にヤギについて理解を深めてもらいたいし、学生と地域の方との交流もしてほしい。そしてイヌ諸君には是非ヤギという異種の動物(本来は餌?!)について知ってもらいたいし、ヤギ諸君にはイヌという動物(本来は捕食者?!)について理解を深めてもらいたいと思っている。
そのイベントに向けて、Mさんが、カニスのブログで上のような宣伝をして下さった。
ヤギとイヌ、ヒトとヤギにどんな出合がまっているのだろうか・・・・・。
2015/12/07
実在したピンクの小さなカニ(動画)
海水アクアリウムがゼミ室にやってきてから7年くらいになる。
最近になって、(これまで一度も話にものぼったことがない)ピンク色の小さなカニがいる、という都市伝説ならぬ水槽伝説が、まことしやかにゼミ室で囁かれていた。
ところが、その伝説が今日、目の前に現れたのだ。
確かに体はピンク色だった。
小さな花のような足、先端が黒色のとてもモダンで大胆な鋏。鮮やかな赤い(!)目。
岩の下にちらっと見えたのをゼミ室にいたPさんが見つけた。
私は、その全貌が見たくて、魚のフレーク餌を水槽に入れてみた。
餌は細かく割れて、塵のようになって海水の中を舞った。
その塵を魚が追い、ヤドカリが競うように拾って食べた。
でも伝説のカニは簡単には岩の下から外へは出てこなかった。
伝説のカニは極めて慎重なのだ。
さて伝説のカニの発見は横に置いておくとして(その種類はまた誰かが調べてゼミ室の白板にでも書くだろう)、私は同じ甲殻類のエビ綱エビ目に属するヤドカリと伝説カニの行動を見ながら思ったのだ。
ヤドカリは伊達には貝を背負ってはいない!
ヤドカリはいわば隠れ場所を背負っているのだ。だから、あんなに大胆に水槽の底を縦横無尽に歩き回ることができるのだ。外敵の気配を感じたら、携帯している貝という隠れ家に逃げ込めばよいのだ。いっぽう、伝説カニ(ヤドカリ以外のカニはすべてそうだが)はそういうわけにはいかない。
外敵が近くにいないことを確認した上で、岩の陰から出て行かなければならない。
下の映像をご覧あれ。
2015/12/04
2015/12/01
私がつくった(巣の中の)モモンガ
モモンガショップで(何のことかお分かりにならない方は下の記事を見ていただきたい)「巣から顔出しモモンガ」に注文がきた。
ところがちょうど、巣の中のモモンガ(これは私が作成の係りになっていた)が売り切れていて、すぐ作らなければならなくなった。
急いで5つほどつくったのだが、どれも可愛くできて、売りたくなくなってきた。
せめて写真を撮ってから送り出すことにした。
上の写真はその中の一つだ。
(思いをこめた)手づくり感がいい(と私は思うのだが)。
モモンガグッズ「巣から顔出しモモンガ」