先日、ゼミ生のNくんと、スナヤツメという、現在、大変希少になってしまった魚の生息地に行った。生息地の水場の底土を採集するためだ(実は、Nくんがかなり前に、労力をかけて底土からつくっていた実験に使う土標本を、実験室の大掃除のとき、それとは気づかず私と他のゼミ生たちが捨ててしまったのだ)。
スナヤツメは、「顎の骨がない」という、現在の硬骨魚の祖先の形質を今に残す原始的な魚で、
現在、生息地の減少からとても希少な動物になっている。
孵化してから数年間はアンモテーシスと呼ばれる幼生期を経て成魚になるという奇妙な特性も備えており、その幼生が砂の中にもぐって生活しているのでスナヤツメと呼ばれるのだ。
そういう意味もあり、彼らがどんな生息地を好むかを知ることは、絶滅危惧種の保護のために重要なことだ。
幼生が生息できる環境に関してこれまでわかっていることは、粒径がとても小さい砂の堆積する水場が必要ということだ。
いっぽう、Nくんが、実験を通じて新たに見いだしたことは、小さい砂の中に、葦などの植物の枯葉断片が混じっていると、幼生はさらに喜ぶ(つまりそちらのほうをより好む)ということだ。
確かに、これまで見つけてきたスナヤツメの幼生が生息する水場周囲には大抵、葦が繁茂している。
Nくんの発見は、スナヤツメの生息地の保全という意味でも重要な発見になる可能性があると思っている。
左側がスナヤツメの幼生、右側がドジョウ.一見似ているが全く別の種類だ
今頃Nくんは、採集してきた底土から、粒径の大きさ別に分けた標本をつくる作業を、黙々とやっているに違いない・