先日、学生のフィールド演習で森に行ったとき、ある動物に出合った。動物とは言っても、クマやシカではなく、全長1cmあるかないかの小さなシャクトリムシである。
シャクトリクシ(漢字では、“尺取り虫”と書く)と言われても、それがどんな動物か分からない方もおられるだろう。シャクトリクシというのは、ある種類の蛾の幼虫である。ある特徴をもった幼虫を総称して、俗っぽくシャクトリクシと呼ぶのだ。なぜシャクトリムシ(尺取り虫)と呼ぶのかについては、下の動画を見ていただければと思う(実に心地よく納得していただけるに違いない)。でも、それは後のお楽しみ、として、まずは、私の話を聞いていただきたい。
音楽にあまり詳しくない(ホントはかなり詳しくない)私が言うのも何であるが、私は声を大にして言いたい。
「世の中は、リズムで満ちている!」
“世の中”というのは、正確に言えば、“ヒトという動物が外界からの情報を脳内で組み立てて生み出した認知世界”ということになる。“リズムで満ちている”というのは、“(外からリズムの刺激がやってこなくても、自らリズムを意識しなくても)脳内でリズムは絶えず生み出され、流れている”といった意味である。
それは、たとえば、次のような場面を思い出せば、ある程度は納得していただけるかもしれない。
誰かの部屋のドアをノックするときは、自然に、トン、トン、トンとリズミカルに叩く。あるいは、1m離れた人にものを投げて渡すとき、「いち、にー、さん」と、リズムを取って投げる。
こんな研究例もある。
夢中で会話している時の二人や、身体的な遊びがうまくかみ合っている時の二人の脳波を調べると、お互いの脳波のリズムがぴったり同調している。
この“リズム”(!)の正体はいったい、何なんだ。
そして、私の動物行動学的な答えは・・・・、
「われわれは、脳内でリズムを回し、いわば、時間の物差しをつくり、外界で変化する物の動きを、その物差しにあてがって把握している」である。
さて、下の動画を見ていただいても結構だ。私が、小さな命の中に感じた「愛らしいくいとおしい、時間的・空間的“リズム”」を、動画を見て共有していただけたら幸せである。