実験を手伝ってもらうキクガシラコウモリは、研究室に連れてきてから一週間近くは、私が、コウモリの口の前にミルワーム(甲虫の幼虫で、コウモリの餌にはうってつけ)をもって食べさせなければならない。
そうするとコウモリはバクッとミルワームにかぶりつき、むしゃむしゃとおいしそうに食べる。
ところがだ、かれらは私が与えるミルワームを次から次へと平らげ、「もう満腹」とばかりにミルワームにかぶりつかなくなるまで、結構な量の餌を与えなければならない。
もうそろそろいいだろ、という私の思いも通じず、まーよく食べるのだ。
そしてそのうち気づいたのだが、かれらは、私が与えた餌をすべて飲み込んでいるのではなく、途中から、口内の頬の辺りに溜めているのだ。その結果、頬の辺りが、ちょうどシマリスやハムスターの、餌で膨らんだ頬袋と同じような状態になるのだ。かなり膨れる。
おーっ、大発見だ!
その様子を撮ったのが上の写真である(ちなみに、ユビナガコウモリやモモジロコウモリなどの他の種類のコウモリではこんなことはない。きっとキクガシラコウモリの生活と深く関係した習性なのだ)。
おそらく世界約73億の人の中でこのことを知っている人は、数十人か数人か、あるいは私だけかもしれない。
「それがどうかしたのか?」とは聞いてはいけない。聞かないで欲しい。