海水アクアリウムがゼミ室にやってきてから7年くらいになる。
最近になって、(これまで一度も話にものぼったことがない)ピンク色の小さなカニがいる、という都市伝説ならぬ水槽伝説が、まことしやかにゼミ室で囁かれていた。
ところが、その伝説が今日、目の前に現れたのだ。
確かに体はピンク色だった。
小さな花のような足、先端が黒色のとてもモダンで大胆な鋏。鮮やかな赤い(!)目。
岩の下にちらっと見えたのをゼミ室にいたPさんが見つけた。
私は、その全貌が見たくて、魚のフレーク餌を水槽に入れてみた。
餌は細かく割れて、塵のようになって海水の中を舞った。
その塵を魚が追い、ヤドカリが競うように拾って食べた。
でも伝説のカニは簡単には岩の下から外へは出てこなかった。
伝説のカニは極めて慎重なのだ。
さて伝説のカニの発見は横に置いておくとして(その種類はまた誰かが調べてゼミ室の白板にでも書くだろう)、私は同じ甲殻類のエビ綱エビ目に属するヤドカリと伝説カニの行動を見ながら思ったのだ。
ヤドカリは伊達には貝を背負ってはいない!
ヤドカリはいわば隠れ場所を背負っているのだ。だから、あんなに大胆に水槽の底を縦横無尽に歩き回ることができるのだ。外敵の気配を感じたら、携帯している貝という隠れ家に逃げ込めばよいのだ。いっぽう、伝説カニ(ヤドカリ以外のカニはすべてそうだが)はそういうわけにはいかない。
外敵が近くにいないことを確認した上で、岩の陰から出て行かなければならない。
下の映像をご覧あれ。