ガラス戸の向こうにあるのが私の荷物.ガラス戸の中央あたりに見える薄茶色のものが蛾(ヤママユガ)
先日、朝10:00から大学で大切な会議があった。
私は、何事もなければ余裕で間に合う、9:20ごろに大学に着いたのだが、入り口で“何事”かがあって、大変な目にあったのだ。
それは休日だったので、外から中に入るとき、自動ドアを開けるために登録されたカードが必要だった。
“何事”というのは次のようなことだった。
カードでドアを開けて中に入ったのだが、入り口付近にはたくさんの蛾(ヤママユガ)が死んでおちていた。建物のドアに引き寄せられてやってきたものの、そこは不毛の土地であり、そこで飛び回り力尽きて死んだのだ。
こんなにたくさんのヤママユガの死体を見たのは五、六年ぶりだ
私は少し記録しておこうと写真を撮りはじめたのだが、そのうち、それらの蛾の多くが雌であることに気がつき(雌は触覚が細く、雄は触覚がシダの葉のように広がっているのだ。雌の体から出るフェロモンをキャッチするためだ)、念のために雌と雄の数を数えはじめたのだ。
雌の触覚は細い!
すると、全部死んでいると思っていた蛾のうちの特に黄色っぽい一匹が、ゾンビのように起き上がって、私の前をぴょんぴょん飛んで(さーっとではない。短い間隔でぴょんぴょん飛んで)、ドアのほうへ向ったのだ。
そうなると、私は自分でもどうしようもない(たぶんイヌのような性質が私の脳の中には存在するのかもしれない)。反射的にその後を追ったのだ。
その際、荷物とカードを中に置いたままゾンビ蛾を追いかけて外に出てしまった(内から外へ出るにはカードは要らない)。
そとで、動かなくなった蛾をまじまじと観察し(雌だった)、気が済んで中に入ろうとしたとき、私に目に飛び込んできたのが、冒頭の写真の光景である。
カードは中にある。携帯電話も中にある。休日なので、中にはだれーーも歩いていない。会議の時間は迫っている。
さてどーしたものか(ここだけの話だが、私にはこういうことは結構よくある)。
私がどうやってその場を切り抜けたか、あるいは、なすすべなく沈没したか。その結末はまたのお楽しみ、ということで。