その日、麓から見上げた氷ノ山の頂は霧に包まれていた。
でも私は、氷ノ山の動物に会いたくて、少々の雨は覚悟で登りはじめた。
会いたい特定の動物がいたわけではない。誰かには会えるに違いないという確信はあった。
中腹まで登ってとき、朽ち果てた大きなブナの木が倒れ掛かり、その背後を、岩を伝うように流れる水路があった。
その根元では、直径30cmほどの水溜りができていた。
ここには何かがいるに違いない。そんな瞬間が好きなのである。
案の定、そこには、威厳たっぷりのヒキガエルと、希少で神秘性を秘めたブチサンショウウオの幼生が棲んでいた。命の深さみたいなものを感じるのだなー。とても。
やがて霧は晴れていき、エゾゼミとアサギリマダラに出会った。
どうしても、いかにも野生!といった環境の中で、動物と会いたくなるときがある。
でも、何も、アマゾンに行かなくても、ヒマラヤに行かなくても、キリマンジェロに行かなくてもよいのだ。たとえば、中米の熱帯に行きとても楽しんだが、自分の住んでいる場所の近くの自然でも、それ以上の、心踊る野生に出会えるのだ。それを感じる感性があるかどうかなのだ。
来週はそんな、野生の動物に会いに行く。会えるといいな。ワクワク。