2015/07/15

ヤギの擬似妊娠!イヌの擬似妊娠!ヒトの擬似妊娠?



 先月、出版した本「先生、洞窟でコウモリとアナグマが同居しています!鳥取環境大学の森の人間動物行動学」(築地書館)を読んでいただいた方から手紙が届いた。

 その中に、私が本の中で書いた話に関連した、とても興味深い出来事が綴られていた。

 “私が本の中で書いた話”というのは、次のような内容である。
 昨年の4月に大学にやってきたヤギ(メイという名前)が、すでにやってきたときには妊娠していたらしく、8月に2匹の仔ヤギを出産した。ところが、メイの出産から授乳の開始に至る出産・育児にすぐそばで立会っていた高齢のヤギ(コハル)が、自分は子どもも産んでいないのに、乳房が張ってきて、結局、乳を出しはじめ、仔ヤギたちの乳母になった。

 手紙をくださった方の経験は次のような内容である。

 独身時代から実家でトイプードルを飼われていたのだが、結婚され、出産され、赤ちゃんと一緒に実家に里帰りされた。ところが、母子の、授乳も含めたやり取りに接していたトイプードルの乳房がだんだんと張ってきて、心配して獣医病院に連れて行ったら、なんと乳が出る状態になっていた。獣医さんは「擬似妊娠」だと言われたということだった(的確な表現だ)。

 イヌはヒトと同じ“哺乳類”であり、乳の臭い、赤ん坊が乳を吸うときに出る音、赤ん坊が乳を求めて泣く声・・・・いろいろよく似ているのだと思う。ちなみに最近の論文で、多くの種類の哺乳類の赤ん坊の鳴く声が、種の違いを超えてとてもよく似ていることを示したものがあった。

 トイプードルの脳も、ヒトの授乳に伴なうさまざまな刺激に反応してしまった、というのが最も可能性がある解釈だろう。

 イヤー、面白い。手紙をくださった方へはもちろんお礼の葉書を書いた。
 われわれヒトが、子どもを産んだ母イヌの授乳の現場で、チューチューと言う音や、まだ目もあいていない子犬が乳首を捜しながら出す声には、確かに心動かす(正確には脳動かす)ものがある。
 

 敏感な方、特に敏感な女性は、“擬似妊娠”に気をつけたほうがいいのかもしれない。

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