先日、ニホンモモンガの調査で、沖ノ山の中腹に行って来た。
調査の合間に、平地になっている疎林を散策するのも楽しみの一つだ。
調査地には、ニホンモモンガをはじめ、ヤマネやニホンリス、ムササビヒメネズミなどの小型哺乳類が樹上を徘徊しているのだが、彼らに混じって樹上を徘徊する両棲類がいる。モリアオガエルだ。特に“平地になっている疎林”にはモリアオガエルも多い。
かれらは、樹上で生活し初夏の産卵期になると、枝が水場に垂れ下がった木の、その枝に産卵する。泡状の塊の中に、卵を一つ一つ産んでいくのである。
そして表面が堅くなり中の水分を逃がさなくなった塊の内部で卵は孵化し、オタマジャクシが誕生する。
やがて雨が降ると、内部にオタマジャクシを抱えた塊の表面は水を吸って溶けていき、中のオタマジャクシたちが下へと落ちていく。そして落ちた先には、・・・・水場(!)がある。
よくできているねー。
モリアオガエルが生息するその森の中の水場は、山からの伏流水が集まってできている小さな池だ(それがまた疎林の景観をとても魅力的に見せてくれる)。そしてそんな小さい池には、たいてい、アカハライモリが棲んでいる。
アカハライモリは、落ちてくる生まれたての小さなオタマジャクシを、パクパクと食べる。美味しそうにパクパクと食べる。
オタナジャクシがかわいそうだが、それが、ヒトも含めた生き物が生きるということだ。アカハライモリにとってもモリアオガエルにとっても、人生ならぬ、アカハライモリ生、モリアオガエル生なのだ。
スギに産みつけられたたくさんのモリアオガエルの卵塊 モリアオガエルの指先の吸盤は、樹上生活に適応して特に発達している
ところが、先日行った調査地の疎林平地で見つけた小池では、状況がちょっと違っていた。
小池にはモリアオガエルのオタマジャクシもアカハライモリもいたのだが、アカハライモリはモリアオガエルのオタマジャクシを食べられないのだ。
その理由は、オタマジャクシが成長していて、アカハライモリから逃げることができたからである。
下の動画をご覧になれば了解していただけるだろう。
ちなみに、この日はあたりが薄暗くなってから調査地を後にした。山を下る途中、車の前に黒い塊を目にした私は、急ハンドルでそれを避けた。
黒い塊に生命の気配を感じたからである。
うまく回避できたかどうか、そして一体何者か、確認しようと思い、車を降りてあたりを探してみたら・・・、立派なヒキガエルがうずくまっていた。怪我はなかった。
私は、「モリアオガエルのオタマジャクシを見習えよ」と思ったのだった。
オシマイ