いろいろ忙しかったのと体調が悪かったので”野生”に行けてなかった。
このままでは”私”が消えてしまう、と思ったので、少々無理をして近くのコウモリの洞窟へ行ってきた。そろそろ実験も再開しなければならないし。
やっぱりいい。
その洞窟は底に結構深い水が溜まっており生息地として条件がよいのだろう。キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、ユビナガコウモリ、モモジロコウモリ、つまり鳥取県の純洞窟性コウモリのすべてがいた。
少なくともキクガシラコウモリとユビナガコウモリについては見た個体はすべて今年生まれた子どもだった。
なぜ分かるか?
私くらいになるとわかるのだ。ジョウダン。キクガシラコウモリは体色で分かる。成獣は首回りから背中が茶色っぽいのだ(子どもは黒)。
ユビナガコウモリは、体長でわかる。
母親は子どもたちにねぐらを譲ってどこかへ行ったということか。貴重な記録だ。
底の水に浮いている昆虫の体の一部からコウモリたちが食べたものが分かる。
セミや蛾が多かった。セミはたぶん、キクガシラが食べたものだろう。
洞窟に入るとき入り口にヒキガエルがいるのに気が付いた。
まるで洞窟を守る守護神のように(私は守護神に何度も許可をお願いし、守護神が何も言わなかったのでOKとみなした)。
そして中に入って”はたと膝を打った”(これを読んでいる若者諸君、この表現、分かるかな)。
実はこの洞窟の入り口ではときどきヒキガエルが見られ、「近くの谷川で産卵しているのかなー」くらいにしか思っていなかったのだが、「そうか、ヒキガエルは、洞窟の中の水中で産卵しているのかもしれないぞ」と思いあたったのだ(外れているかもしれない。でも当たっている可能性は高い)。
下山では美しいエビネにも出会い、私のよどんでいた心は少しは浄化されて、ホモサピエンスの居住地へと戻っていったのだ。