少し硬い話だ。でもヒトについて理解を深めるためには重要な話だ。
以下の説は、4割は従来から(現在も)動物行動学者たちが言っていることであり、6割は私のオリジナルだ。
“美しい”という感情は、ヒトの脳が、対象をうまく把握した(何なのかがよく分かった)ときに生じる感覚である。そして、その対象が、自分の生存・繁殖にとって利益になる可能性があると思った(たいていは無意識に)ときその“美しさ”感情はより強く感じられる。
少し具体的に。
①色:
色の情報処理に重要な働きをする脳内の視床では、目から入った色の情報は青、緑、黄、赤(いわゆる4原色!)それぞれに一端まとめあげられ、大脳へと送られる。だから、原色だけ、あるいは原色の組み合わせ(真っ青な空、真っ赤な服、一面真黄色のヒマワリの花畑、黒い背景の中に浮き上がる鮮やかな赤や黄色や緑の花火・・・・)は美しい。
②空間や音:
対称やバランス、リズムといった秩序・規則あるものは美しい。
③行為:
一貫していること(一貫した信念に基づいたぶれない生き方、一貫した他人への援助、いわゆる美談、悪さえも一貫した秩序に貫かれているときは、悪の美学とも呼ばれる)は美しい。
③理論:
一見複雑そうな対象・現象をシンプルな原理や数式で見切ったとき、美しい理論、美しい数式などと呼ぶ。
そして、上のような「ヒトの脳が、対象をうまく把握した(何なのかがよく分かった)とき」に加え、「その対象が、自分の生存・繁殖にとって利益になる可能性があると思った(たいていは無意識に)ときその“美しさ”感情はより強く感じられる」。以下、具体例。
A 美談:
一貫して他人を助ける行為・・・それが自分に向けられたら、自分の生存・繁殖にとって利益になる可能性がある。
B 異性の外見(のみ):
たとえば顔のパーツの並びが、左右対称、バランス、黄金比などに合致し(以上、顔の把握がうまくいくこと)、かつ、若さや健康さの指標であるぱっちりした目、肌の張などがあれば(以上、そういった異性と番をつくれたら自分の繁殖に有利)、“美しさ”感情はより強く感じられる。
C 茶道や華道における作法:
順序なども重視され、秩序だった進行(以上、作法の把握がしやすい)に加え、相手への思いやりの心(それが向けられた自分にとしては生存・繁殖に有利と感じる)が込められた作法が美しいとされる。
さて、そして「花」だ。
原色、あるいは原色が組み合わさった色、秩序だった形状(対称、円、バランスなど)・・・以上が「把握がうまくいくこと」につながる」。そして、花があるということは、それはやがて、自分(ホモサピエンス)が食することができる実ができる可能性を示している、また、その地は自分の餌を育む豊かな土地であることを示す。
だから我々ホモサピエンスは、花を、「美しい」と感じるのだ。
問題は、以上の「美しい」説をいかにして検証するか、ということだ。
ちなみに、美しさが「対象の把握の成功」だとすると、芸術は「対象についての新しい認識、あるいは、認識の向上」と捉えればよいと私は思っている。絵画芸術の進展を考えてみよう。・・・・印象派の出現・・・・キュビズム(立体主義)の出現・・・・!
さて、3月の山で私が出会った、揺れるモクレンの花(下の動画)を見ながら、美しさと芸術について考えてみたい気分。
この、揺れるモクレンの花について、「へーっ、こんな見方ができるのだ」という見方を提示できたら(俳句、短歌、詩、絵画、音楽・・・)、それは芸術だ。
「芸術は爆発だ!」と岡本太郎氏は言った。そう、芸術は爆発であり驚きだ!
(いつものことながら)何の話だっけ?
「芸術は爆発だ!」と岡本太郎氏は言った。そう、芸術は爆発であり驚きだ!
(いつものことながら)何の話だっけ?