先日の日曜日の朝日新聞に、通称「ゲイジュツ家のクマさん」こと、篠原勝之さんの取材記事が載っていた。
篠原さんは廃材などの鉄を使って大きなオブジェをつくる芸術家で、私は篠原さんの作品が大好きだ。
私も金属で物をつくるのが好きなのだが、私が見たことがある篠原さんの作品は、スケールが大きくてダイナミックで、それでいてとても繊細で、細部にまで切れがある。鉄の硬さと重量感が、立体をより魅力的にしている、そんな印象がある。
その取材の中で篠原さんは次のように話している(ちなみに篠原さんはエッセイなどの文章も書かれ、取材では最近出版された自伝的短編集が話題になっている)。
「・・・・書くのも造るのも、頭で考えたことが形になる面白さは、何も変わらない」
もちろん篠原さんほどには深くないが、私もその気持ちがよく分かる。
青臭いことをあえて言えば、それは人生を豊かにしてくれる。
だから私は、そういうよいものを手に入れてほしいと思い、あるいはもっと磨いて欲しいと思い、鳥取環境大学のヤギ部の部員達や、鳥取環境大学まちなかキャンパス・里山生物園を管理運営している学生達に、体験したエピソードや考えたことを文章にすることを薦めている。
そんな中、私の呼びかけに応えて、ヤギ部前部長のKさんが、次のような文章を送ってきてくれた。
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2015年5月24日(日) 天気:晴れ 今日は休日の当番。ヤギは6頭いるので、いつもの日課はヤギの頭数を数えること。「こはる、くるみ、メイちゃん、こむぎ、あずき・・・あれっきなこは?」と言っていると、それに気付いたのか遠くのほうで「めぇぇぇー!!」と鳴き声が。声のするほうに近づいていくと、鳴きすぎて声が枯れているきなこが柵に引っかかっている。
かわいそうであったが、少し笑ってしまった。私は「外の草を食べようと欲張るから、こんなことになるんだぞー。」と言いながら、きなこの頭を必死に柵から出した。やっとのことで きなこを柵から出すと、きなこは全速力で逃げて行った。「良かった良かった。」と思うと同時に、「もし当番の時間がずれていて見つけるのが遅くなっていたら・・・」と想像すると恐ろしかった。
ヤギと過ごすのは楽しいが、ヤギたちは危険が起こっても人間に話せない。放し飼いの彼らはいつも死と隣り合わせなのだとつくづく感じる日々である。
少し話は変わるが、私がきなこを救ったおかげなのか、他の部員に頭突きをしだしたきなこは私に一度もしたことがない。なんとも特別な扱いでうれしくなる今日この頃である。
部員達が書いた、私も知らないようなヤギ達の秘密を、いつかまとめてヤギ部の本ができたらいいな、と思っている。