カエルなどの両生類が大好きなゼミ生のYくんは、「河川敷と、近くの田んぼでの、それぞれ環境が異なる区域の特性と、出現するカエルの種の関係、その季節的変化、そして各々の種のカエルが食べている餌」について調べている。
私はかねがね、地域の生態系の保全における河川敷の重要性を感じていて、Yくんの興味と合致する上記のようなテーマを、相談して決めたのだ。作業は大変だが、いろいろ興味深いことが分かりつつある。
研究の中でYくんは各々のカエルが食べた餌を調べなければならないのだが、そのために、カエルが本来習性として持っている「胃の反転」という現象を利用している。
カエルは何か有害な物質を出す昆虫などを食べてしまったとき(彼らは主に視覚に頼って獲物に飛びつくのでそんなことが起こるのだ)自分で胃を反転させて、胃に入ったものを吐き出すのだ(両手も使い、反転して外側に出た胃の内表面から異物を取り去ることまで行う)。
Yくんは、この行動を人為的に起こさせる“胃の反転法”と呼ばれている方法をすべての個体について行う(8月の終わりの調査では、50匹以上のカエルを採取して大学に持ち帰り、胃の反転法を含めた一連の作業を深夜夕方から2時ごろ、あるいはそれより遅くまでやっていた)。
帰り際に、よく頑張るねーと声をかけると、好きなのことなので面白いです、とさわやかに言った。いや、立派だ。
もちろんもうYくんは“胃の反転法”の達人になっていて、友だちのSくんからは、反転カエル殺し人とか何とか呼ばれていたが、反転させてもカエルは死なない。
でも、ちょっとグロテスクに感じる方のおられるかもしれないので、ここでお見せするのは控えるが、まさに胃の反転が完成(?)したときは、確かにインパクトがある。
でも、反転させているときのYくんは、どうみても笑みがこぼれている。私はヒトの表情は見逃さないのだ。
頑張ってほしいと、胃から、いや心から、思っている
胃の反転法でアマガエルから出てきた昆虫