海の磯で見つけた蟹である。
海藻がいい感じに頭に生え、モヒカンのヘアースタイルで波打ち際を歩いていた。
体の幅が1.5センチほどの小さな蟹だが、私の目からは逃れられなかった、ということだ。
私に捕まると、もちろん精一杯の抵抗をした。鋏で私の指を力いっぱい挟み、他の足をばたばた動かした。残念ながら、動物の扱いには慣れてるんだ。よしよしとなだめながら、蟹のポイントをくっと握ると、ぴたっと動きを止めた。
写真を撮って、磯に戻してやると、早足で海水に入り、しばらくじっとしていたが、なんと、突然、海藻の端を食べはじめたのだ。
海藻は、自分の体を隠すのにもいいし、さらに食べ物にもなる。
モヒカン蟹はいいものを見つけたものだ。
別な生き物をこんなに便利に利用する動物はそう多くはいないだろう。
私が一つ思い浮かぶのは、ヤギやヒツジなどの反芻類だ。彼らは、胃を拡張し、食べたものを一次的にためる大きな貯蔵室と、微生物(細菌や繊毛虫)を含む発酵室をつくっている。
ヤギやヒツジは、食べた植物の繊維を微生物に分解させ、同時に、ときどき発酵室で増えた微生物を消化して、タンパク質として吸収しているのだ。
ヒトでいえば、日避けとしてゴーヤのカーテンをつくり、実ったゴーヤを食べる、みたいなものだろうか。
磯は、いろんな生き物に出会えていいよなー。
もう数ヶ月で春だ。春になったら磯に行こう!