今日は、昨年の初夏の話をしよう(「なぜ昨年の話なのか?」と疑問に思ってはいけない。いろいろ事情があるのだ。ブログをとぎらせずに書いている方ならお分かりだろう)。
でも、これを読んだあなたはとてもとても幸運だ。
今日の話は、ちょっと他のブログでは聞けない、驚くべき話だ。
ニホンモモンガの巣箱を調べていたときの話だ。
スギの木に取り付けていた、ある巣箱に、これまで見たこともない変化が起きていた。
それが上の写真だ。
四角の大き目の入り口が、角の小さな隙間を除いて、なんと“土”で封じられていたのだ。
つまり、大きな入り口の穴が小さーい穴に加工されていたのだ。
壁は、縦10センチ、横5センチ、厚さ2センチくらいはある。表面は滑らかだ。
運んだ土の量はかなり多い。かつ、細かな箇所も行き届いている。いい仕事、というのだろう。
これだけの仕事ができる動物は、一体何者なのか。
私の頭の中でいろいろな動物が飛び跳ねた。
運ばれた土の量から考えて、ある程度大きな動物であるはずだ。
でも、角に開けられた穴から出入りできるほど小さくなければならない。
一体誰だ!一体・・・・。私が、これまで見たこともない動物かもしれない。
私は、そのままの状態で保存しておくつもりだったが、あるとき我慢仕切れなくて、“壁”を取って、中の状態を調べてみた。
中には、大小さまざまな大きさの樹皮の断片が出てきた。
いよいよ正体が分からなくなった。
*
答えは、あるとき、あっけなく訪れた。
卒業研究で、「鳥の巣の形態と卵の表面模様の関係」をテーマにしていたKさんがもっていた本をパラパラと見ていたら、「キツツキ類の古巣などを利用し、内側や隙間に泥を塗る習性がある」という解説とともに、巣の状態が写真とともに載せてあった。
ゴジュウカラだった。
私は、カラの仲間(シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ)は見たことがあったが、ゴジュウカラは見たことがなかった(鳥取県のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されていた)。
へーっ、ゴジュウカラって、こんなすごい仕事をするんだ。
私はとても驚いたのだった。
カラ類の中では大きいほうだが、それでも小鳥があれだけの土を運ぶのはとても大変な作業だったに違いない。でもかれらは、入り口の大きさにこだわった、ということだ。
そして思ったのだ。
逆に考えると、巣をつくる動物にとって、入り口の大きさは、とても重要な要素なのだ。私は、野生動物の行動を理解する上での重要な視点をもらったような気がして、とても嬉しかった。
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