2月、1週間ほど穏やかな日が続いた後、久しぶりに雪が降った。
予定していたコウモリ洞窟への調査行きができなくなった。
さて、大学のヤギ放牧場の小屋の傍には、5,6メートルほどのトチノキ(トチの実のお菓子、ご存じないですか。あのトチです)がある。写真の矢印の先だ。
植えられて2年目だ。
ヤギたちは小屋の中にいて外に出ようとはしない。小屋のトチノキと小屋との間にある小さな池は、周囲が真っ白になり、表面はシャーベット状になっている。中では、アカガエルの胚が、オタマジャクシにむかって、ゆっくりゆっくり成長している。
そして、トチノキだ。
このトチノキ、2年前にその場所に植えられてから、いろんなことがあった。少しずつ鳥たちが生活の一部に取り入れていき、毛虫も食料にし始めた。
つまり生態系のなかになじんでいったのだ。
一方で、トチノキ自身の戦いの日々もあった。放牧場の中は、土質の関係で、植物が育ちにくく、これまでに部員達が植えた木は、ことごとく枯れた(その原因の一部は、ヤギたちが葉を食べこともあるのだが)。
トチノキは頑張った。私も部員も、水遣りや施肥で頑張った(私はいつか、このトチノキの話を、どこかで、まとめた文章にしたいと思っている。トチノキとヤギたちと鳥と人が織り成す物語として・・・ちょっと格好つけすぎました)。
この雪のなかでトチノキはどうしているか。
そう、それをお伝えしようとして写真(右下)をとった。
トチノキは、雪の寒さの中でしっかりと冬芽を用意しているのだ。硬くて、表面が粘着性の樹脂で覆われた冬芽を(樹脂は、寒さ対策なのか、来るべき新芽の時期に、毛虫から身を守るためのものなのか、そのあたりの理由はわからない)。
そして、私が一番、心を動かされているのは、冬芽の大きさだ。
昨年の冬目の大きさより、一回り二回り、小さいのだ。その小ささにこそ、この2年間のトチノキの物語の核心があるのだ。
そのお話は、またいつか別の場所で。