車の中から知人が見えたら、突然、手を上げると、相手も私と同じ動作をすることがよくある
先日、ある講義で、「ミラーニューロン」の話をした。自分で話していて、改めて面白かったので、もう一度ここでお話したい。
ミラーニューロンと言うのは、ヒトも含めた霊長類の脳内にあるとされる神経システムで、相手がある動作をすると、その動作を引き起こす脳内の神経活動を、自分の脳内で再現する神経システムである。
たとえば、椅子に座っている相手が腕を組むと、自分の脳内でも、ミラーニューロンが働いて、腕を組む動きを引き起こす神経活動が起こるのである。
でも、通常は、自分の側におこる神経活動が、筋肉に伝わることはない。神経と筋肉をつなげるスイッチをオフにしているからである。
でも、とっさの時とか、神経の活動が充分作動しない、幼児や年配者では、スイッチがつながったままで、ミラーニューロンが働き、相手と同じ動作が発現してしまうことがある。
たとえば、私は、半分親しみを込めて、半分研究的興味から、廊下を曲がって突然出会う学生とか、スーパーでお金を支払うときレジの人に、突然の動作をしかけることがある。
廊下を曲がって突然出会った学生に「よっ」と言って手をあげると、その学生も、手をあげて挨拶することがある。一般的に、日本では、手をあげての挨拶は目上の人にしてはいけない雰囲気があるので、学生は、手をあげて挨拶した後、何かバツが悪そうな表情をすることがある。ゴメンね。半分(実際には、1/10くらい)研究のためだから許してね。
スーパーでお金を支払うときレジの人に、「ハイッ」といってお金を出すと、レジの人も「ハイッ」と言って受け取ることが多い(皆さんもやってみてください)。言葉の一つもない、無機質になりがちなレジでのやり取りが、少しホットな感じにもなる。
とっさの時は、神経と筋肉とをつなげるスイッチを抑制する暇がないからだと私は考えている。
小さな子どもは、テレビで、元気にリズミカルにダンスをする人(パンダでもフナッシーでもよい)を見ると、自分も踊りだすことが多い。
プロレスが好きだった私の伯父は、座ってテレビを見ていて、ひいきのレスラーがボディースラムをするとき、その動作と同調して、腰が浮き、腕が小さく動いた。本人は気がついていなかっただろう。
ミラーニューロンは、アスリートのイメージトレーニングの仕組みも説明するし、もらい泣きの仕組みも説明する。
最近の研究では、ミラーニューロンは動作ばかりではなく、悲しそうな顔を見ると悲しさ感情を生み出す神経活動を、苦そうに何かを飲む人を見ると、苦さ感覚を感情を生み出す神経活動を引き起こすこともわかりはじめている。
恐るべし、ミラーニューロン。
笑顔は周りも明るくする(暗い顔は周りを暗くする)・・・・、それにもミラーニューロンが関係していることは想像に難くない。でもなー、そうは言われても(自分で言っているのだが)、苦しいときに笑顔をするのは結構きつい。第一顔が引きつって奇妙な笑顔になる。奇妙な雰囲気を作り出してしまったら、いったい誰が責任を取ってくれるというのだろうか。
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